うちの子は重度の知的障害と自閉症、愛の手帳A1(最重度)。横浜市の特別支援学校の高等部にいて、卒業後の進路が、いま家にとって一番大きなテーマです。
「卒業後の進路」と聞くと、いくつかの選択肢から良さそうなものを選ぶ——そんなイメージを持つかもしれません。私も最初はそう思っていました。でも、重度の子の親として実際に見学や実習に動いてみて感じたのは、「選ぶ」というより「合うところがあるかどうか」だった、ということです。その「合うところがあるか」という問いに、見学と実習で実際に向き合ってきました。
卒業後の進路には、どんな選択肢があるのか
特別支援学校の高等部を卒業したあとの進路は、大まかに次のような選択肢があると、学校の進路説明や見学で理解しました(呼び方や区分は自治体・事業所で変わります)。
- 就労継続支援A型:事業所と雇用契約を結んで働く。最低賃金が支払われるが、一定の作業能力・勤怠が前提
- 就労継続支援B型:雇用契約はなく、体調や特性に合わせて作業し、工賃(賃金より低い)を受け取る
- 生活介護:常に介護が必要な人が、日中活動・介護・創作活動などをして過ごす。働くことより「日中を安心して過ごす」場
- 施設入所支援:日中だけでなく、生活の場そのものを施設に移す
- そのほか、自宅で過ごす、医療的ケアの体制がある場所に通う、など
並べると選択肢は多く見えます。でも、子どもの状態によって、現実的に当てはまるものはかなり絞られます。 我が家の場合、ここがはっきりしていました。
我が家は「生活介護」が中心になった
うちの子は、自分で作業の指示を理解して手順どおり進めることが難しく、トイレや食事を含め生活全般に介助が必要です。言葉でのやりとりも多くありません。
だから、就労継続支援(A型・B型)は、見学に行く前の段階で「現実的ではないな」と分かりました。B型でも、ある程度は指示を理解して作業に向かうことが前提になります。「働く」を軸にした進路は、うちの子には合わない。進路の中心は、最初から「生活介護」でした。
ここが、冒頭に書いた「選べるのではなく、合うところがあるか」という感覚の中身です。「どの働き方を選ぶか」ではなく、「この子を安心して預けられる生活介護の場所が、通える範囲にあるか」——問いの立て方そのものが、定型発達のお子さんの進路選びとは、根本から違っていました。
実際に第一志望の生活介護事業所で5日間の体験実習をしたときの記録は、別の記事に詳しく書いています。
生活介護の実習5日間、内容と様子
生活介護の実習、持ち物・準備・1日の流れ
見学で、私たちが実際に見たこと
「合う場所か」を確かめるために、見学では何を見ればいいのか。最初は分かりませんでした。通ううちに、我が家が自然とチェックするようになったのは、次のような点です。
- 通える距離か:毎日のことです。送迎は親がやるのか、事業所の送迎があるのか。我が家の実習では送迎は親がしました。片道の時間は、続けられるかを左右します。
- 重度の子への対応に慣れているか:施設によって、受け入れている障害の重さの中心が違います。最重度の子が少ない場所だと、本人も浮いてしまう。
- トイレ・食事の介助体制:うちはトイレの声かけ誘導(学校では1時間に1回ほど)と、早食い・丸呑みへの食事の見守りが要ります。そこを具体的にどう見てもらえるか。
- 医療的ケアの有無や、体調を崩したときの対応
- 定員と、空きがあるか:どんなに合っていても、空きがなければ通えません。
- 日中、利用者さんがどんな様子で過ごしているか:パンフレットでは分からない、その場の空気。穏やかか、職員さんの声かけはどうか。
見学のときに、こうした点を遠慮せず質問してよかったと思っています。施設の方も、むしろ具体的に聞いてくれたほうが配慮しやすい、という雰囲気でした。
「一つずつ、第一志望から」動いた理由
進路先の探し方には、複数を同時に見比べるやり方もあると思います。でも我が家は、第一志望にまず実習に行き、難しければ次へという「一つずつ」のかたちで進めました。
理由は単純で、うちの子にとって、慣れない場所に行くこと自体が大きな負担だからです。あちこち同時に連れ回すより、「ここだ」と思える一か所にじっくり通って、本人がそこで落ち着けるかを見たかった。だから1回の実習が、そのまま本命への挑戦になります。緊張もしましたが、本人の負担を考えると、この進め方で正解だったと感じています。
親が一番不安だったこと
進路を動かす中で、私が一番不安だったのは、次のことでした。
1. 「合うところ」が、通える範囲にあるとは限らない
重度の子をきちんと見てくれて、本人が落ち着いて過ごせて、なおかつ毎日通える距離。この条件が全部そろう場所は、そう多くありません。定員に空きがあるかも、タイミング次第です。
2. 見学・実習の動き出しが、思っていたより早い
「卒業の年に考えればいい」ではなく、高等部のうちから見学や実習が始まります。情報を集めて動き出すのが遅れると、選択肢がさらに狭まる。 ここは早めに動いてよかった点です。
3. 「この子の日中が、これで決まる」という重さ
就職と違って、「合わなかったから来年転職」とは簡単にいきません。生活介護は、その後ずっと通う場所になりうる。だから一つひとつの見学に、いつも独特の緊張がありました。
4. その先にある「親なき後」のこと
進路を考えていると、どうしても「自分たちがいなくなったあと、この子はどこで過ごすのか」という問いが、頭の片隅をよぎります。日中の場をどう確保するかは、親なき後の備えとも地続きでした。
きょうだいがいない我が家の「親なき後」準備
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動いてみて、少し楽になったこと
不安ばかり書きましたが、動く中で楽になったこともあります。
ひとつは、学校の進路担当の先生が、見学や実習の段取りをかなり助けてくれたことです。どこにどんな事業所があるか、どう連絡して、いつ見学に行けばいいか。家だけで一から探すのは大変ですが、学校が間に入ってくれました。進路担当に早めに相談するのは、本当に大事だと感じています。
もうひとつは、実習に行ってみて初めて分かることが多かったことです。パンフレットや短い見学では分からない、本人がその場で落ち着けるか。実習の事前面談で「頑張りすぎなくていい」と何度も言ってもらえたこと、5日間を大きく崩れずに過ごせたこと。その積み重ねで「ここなら」と思えたのが、親の不安をいちばん和らげてくれました。
生活介護の体験実習・事前面談でかけられた言葉
高等部3年間の、だいたいの流れ(我が家の場合)
「いつ動けばいいのか」が見えないのが、一番こわいところでした。我が家の体感ですが、おおよそこんな流れでした(学校・自治体で違います)。
- 1〜2年生:進路説明会で全体像を知る。先輩の進路先の話を聞く。気になる事業所の見学を少しずつ始める
- 3年生の前半:候補をしぼり、体験実習へ。我が家は第一志望に5日間
- 3年生の後半:実習の振り返りを経て、通所先を決定。受給者証など必要な手続きへ
ポイントは、「3年生になってから」では遅い場面があることです。見学は1〜2年生のうちから動けます。早く動くほど、選択肢も心の準備も増えました。
まとめ
- 重度の子の卒業後の進路は、「どれを選ぶか」より「合う場所が通える範囲にあるか」という問いになりやすい
- 選択肢は就労継続支援A型・B型/生活介護/施設入所などあるが、状態によって現実的な候補は絞られる。我が家は最初から生活介護が中心
- 見学では「距離・重度対応・介助体制・医療ケア・空き・利用者の様子」を遠慮せず確認するとよい
- 我が家は第一志望に一つずつ実習に行く進め方をとった(本人の負担を考えて)
- 不安だったのは①合う場所が近くにあるとは限らない②動き出しが早い③日中が決まる重さ④親なき後との地続き
- 1〜2年生のうちから見学を始め、実習で「本人が落ち着けるか」を確かめるのが、不安を減らす近道だった
進路は、まだ我が家にとって現在進行形のテーマです。実際に通い始めてからのことも、また記録していきます。正確な制度・選択肢は、学校や各窓口で必ずご確認ください。
この記事について
- この記事は2026年時点の、我が家の記録です。最終更新日:2026年6月29日。進路の制度・選択肢・名称は年度・自治体・学校で変わります。最新・正確な情報は、学校の進路担当や各事業所、市区町村の窓口で必ずご確認ください。
- 家族が特定される情報(学校名・施設名など)はぼかして書いています。制度や手続きについては、身近に行政書士(義理の叔母)がいて相談できる環境で書いていますが、私自身は専門家ではありません。
- 書き手のプロフィールはこちら → /about/
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【参考リンク(公的機関)】
- 厚生労働省「障害者の就労支援(就労継続支援A型・B型ほか)」
- 進路の具体的な選択肢・空き状況は、通学先の学校の進路担当、各事業所、お住まいの市区町村の障害福祉窓口でご確認ください。
