うちの子は重度の知的障害と自閉症、愛の手帳A1(最重度)。一人っ子です。そして私は、再婚で家族になった義父です。
障害のある子の親が、いつか必ず向き合うのが「親なき後」——自分たちがいなくなったあと、この子はどうやって生きていくのか、という問いです。多くの「親なき後」の情報は、きょうだい(兄弟姉妹)が将来支えることを、どこかで前提にしています。でも、我が家にはそのきょうだいがいません。
頼れる兄弟姉妹がいない。だからこそ、「誰かが自然に引き継いでくれる」ことを当てにできない。 だから我が家は、お金・手続き・住まい、そして「血縁以外の支える輪」を、親が元気なうちに自分で用意し始めています。
「きょうだいに託す」が、最初から選べない
「親なき後は、きょうだいが面倒を見てくれるんでしょう」——そう思われることがあります。実際、きょうだい児がいる家庭では、それが一つの支えになり得ます(その分、きょうだいに負担が偏るという別の問題もありますが)。
でも我が家は一人っ子です。この子のことを引き継いでくれる血縁の若い世代が、いない。 ここが、我が家の親なき後の出発点です。
最初は、ここに漠然とした不安がありました。でも、きょうだいに託せないのなら、血縁に頼らない仕組みを、親が元気なうちに自分で組んでおくしかありません。そう考えると、むしろ早く動けるとも思えてきました。頼れる血縁がいないことは、裏を返せば「早く・自分の意思で・仕組みで備える」動機になります。
1. お金:本人に遺すより、「本人のために管理される」形を
親なき後のお金で大事なのは、「いくら遺すか」だけではありません。重度の知的障害がある本人は、お金を自分で管理できないからです。まとまったお金をそのまま遺しても、本人が使いこなすことはできず、かえって悪用されるリスクすらあります。
だから我が家が考えているのは、「本人のために、誰かが適切に管理してくれる形で残す」ことです。調べる中で知った代表的な仕組みを挙げます(いずれも要件・金額は要確認)。
- 障害者扶養共済制度(しょうがい共済):親が掛金を納め、親が亡くなったあと、障害のある子に終身で年金が支給される公的な制度。1口あたり月2万円、最大2口(月4万円)まで。掛金は加入時の保護者の年齢で決まるので、早く入るほど掛金が安い
- 20歳からの障害基礎年金:本人名義の、親の所得に縛られない収入の柱。これが親なき後も続く土台になる(→ 別記事に詳しく)
- 特定贈与信託:重度障害(特別障害者)の人に財産を信託で遺すと、一定額まで贈与税が非課税になる仕組みがあると聞きます。金額や要件は大きいので、必ず専門家に確認
- 成年後見人による財産管理:遺したお金を、後見人が本人のために管理・支出する
具体的な金額や、信託・相続といった踏み込んだ設計は、家庭ごとに大きく違います。我が家も、義理の叔母(行政書士)に相談しながら、まず「どんな選択肢があるか」を整理しているところです。
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2. 手続きを引き継ぐ人:きょうだいがいないからこそ「成年後見」
親なき後、この子に関わる契約や手続き(福祉サービスの契約・更新、お金の管理、入院や入所の手続き)を、誰が法的に代理し続けるのか。きょうだいがいない我が家では、ここを血縁に委ねることができません。
だから我が家は、成年後見を前提に考えています。親が後見人になっても、私たちはいつか先にいなくなる。「その先」を担う後見人——多くは専門職(弁護士・司法書士など)——に、最終的にはバトンを渡すことになる、と見通しています。専門職に頼めば継続的な報酬は発生しますが、きょうだいがいない以上、ここは必要な費用だと考えています。
「子のことを一番分かっていない第三者に託す」ことへの複雑な気持ちは、確かにあります。でも、きょうだいがいない以上、信頼できる第三者の仕組みに託せるよう、親のうちに準備しておくことが、一番現実的な備えだと考えています。
障害のある子が18歳になる日、親の代理権は消える。「成年後見」を選ぶまで
3. 住まいと日中の場:生活の拠点を、親のうちに
親なき後は、「お金」と「手続き」だけでなく、どこで暮らし、日中をどう過ごすかという生活そのものが課題になります。
我が家はまだ卒業後の進路(生活介護)の段階ですが、その先には、グループホームや施設入所など、生活の場そのものを家の外に移す選択肢も視野に入ってきます。こうした場所は、希望してもすぐ入れるとは限らず、待機が長いことも多いと聞きます。きょうだいが受け皿になってくれるわけではないので、親が元気なうちに、本人に合う場所を時間をかけて探し、見学や短期利用で慣らしておく必要があると感じています。
4. 「血縁以外の、支える輪」を今から作る
きょうだいがいないからこそ、私がいちばん大事だと思っているのが、これです。血縁に頼れないなら、本人を知ってくれている人を、家族以外にも増やしておく。具体的には、
- 相談支援専門員(福祉サービスの計画を作ってくれる人)と、長く関係を持っておく
- 通所先や、将来のグループホームなど、本人を知る支援者を増やす
- 地域の親の会など、同じ立場でつながれる場を持っておく
親なき後に本人を支えるのは、結局「制度」と「お金」と「本人を知っている人たち」です。その人たちとの関係を、親が元気なうちから少しずつ作っておくことが、何よりの備えだと思っています。
5. いま実際にやっていること
具体的に、いま手をつけているのはこの3つです。
1. 情報と書類の一元化:手当・年金・福祉サービス・医療・通帳の情報を、第三者が見ても引き継げるよう一覧にまとめています。親なき後、後見人や支援者が「この子のこと」を把握できる形に
2. 本人の「取扱説明書」を残す:苦手な刺激、好きなこと、食事や排泄の癖、落ち着く方法、体調を崩したときのサイン。言葉で説明できない本人の代わりに、本人を知らない人でもケアできる記録を、元気なうちに
3. 行政書士(義理の叔母)への相談を続ける:後見・お金・制度を、思いついたときに聞ける環境を活かして、少しずつ整理
どれも、「今日やらないと困る」ことではありません。だからこそ後回しになりがちですが、親なき後の準備は、親が元気で判断できるうちにしかできない——ここが一番のポイントです。
いつから動くか(我が家の見通し)
「親なき後」は遠い話に思えて、動き出すタイミングは意外と早い、というのが実感です。
- 18歳前後:成年後見の準備(誰が後見人かを考え始める)。障害者扶養共済は親が若いほど掛金が安いので、検討は早いほどよい
- 20歳前後:障害基礎年金の請求(本人の収入の土台)
- 20代〜:グループホーム等の見学・短期利用を少しずつ。相談支援専門員との関係づくり
- 親が元気なうち(いつでも):お金の設計、本人の「取扱説明書」、書類の一元化
我が家もまだ、その入り口に立ったところです。
まとめ
- 多くの「親なき後」はきょうだいが支える前提だが、一人っ子の我が家はそれを当てにできない
- だからこそ、血縁に頼らない仕組みを親のうちに組む。お金・手続き・住まい・支える輪の4つで備える
- お金は「遺す」より「本人のために管理される形」で(障害者扶養共済・障害基礎年金・特定贈与信託・後見人の財産管理)。扶養共済は早く入るほど掛金が安い
- 手続きは成年後見を前提に。最終的には信頼できる第三者(専門職)へ
- きょうだいがいないからこそ、相談支援専門員・支援者・親の会など「本人を知る人」を今から増やす
- 親が元気なうちにしかできない準備だから、後回しにしない
我が家の親なき後の準備も、まだ始まったばかりです。進めていく中で分かったことは、その都度この記録に追記していきます。お金・相続・後見の判断は、必ず専門家や行政窓口にご相談ください。
この記事について
- この記事は2026年時点の、我が家の記録です。最終更新日:2026年6月29日。制度・費用・対象は年度・自治体・個々の事情で変わります。最新・正確な情報は、各窓口や公式サイトで必ずご確認ください。
- 家族が特定される情報はぼかして書いています。制度や手続きについては、身近に行政書士(義理の叔母)がいて相談できる環境で書いていますが、私自身は専門家ではありません。お金・相続・後見の判断は、専門家にご相談ください。
- 書き手のプロフィールはこちら → /about/
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【参考リンク(公的機関)】
- 厚生労働省「障害者扶養共済制度(しょうがい共済)」
- 厚生労働省「成年後見制度」
- お金・相続・後見の具体的な設計は、お住まいの市区町村の窓口や、専門家(弁護士・司法書士・行政書士・信託銀行など)にご確認ください。
