障害のある子の「取扱説明書(サポートブック)」を作ってみた。——親なき後・緊急時に、本人を知らない人へ引き継ぐために

障害のある子の取扱説明書 サポートブックを作ってみた

うちの子は重度の知的障害と自閉症、愛の手帳A1(最重度)。一人っ子で、言葉でのやりとりは多くありません。

この子のことを、いま一番分かっているのは親の私たちです。でも、ずっとそばにいられるわけではありません。入院、災害、将来のグループホーム、そして「親なき後」。本人を知らない人が、この子をケアしなければならない場面は、必ず来ます。そのとき、しゃべれない本人の代わりに「この子はこういう子です」と伝えるものが要る——そう考えて、我が家は本人の「取扱説明書」、いわゆるサポートブックを作り始めました。いざ書き出してみると、手が止まる場面がいくつもありました。


目次

サポートブックとは何か

サポートブックは、障害のある本人の特性・好き嫌い・対応の仕方などをまとめた、「本人を知らない人でもケアできるようにするための引き継ぎノート」です。決まった様式はなく、ノートでも、プリントでも、スマホのメモでも構いません。自治体や相談支援専門員が様式を用意していることもあります。

我が家がこれを作ろうと思った一番の理由は、親なき後でした。きょうだいがいない我が家では、いつか後見人や施設の支援者に、この子のことを丸ごと引き継ぐことになります。そのときに「言葉にして渡せるもの」がないと、本人がしんどい思いをする。だから元気なうちに、と思いました。
きょうだいがいない我が家の「親なき後」準備


我が家が書いている項目(そのまま使えるように全部出します)

「何を書けばいいのか」が一番分からないところだと思うので、我が家が実際に書いている項目を、まるごと載せます。これを埋めていくだけでも、立派なサポートブックになります。

1. 基本情報
名前/呼ばれたい呼び名/生年・年齢/障害名・診断/手帳の種類と等級/かかりつけ医・病院/飲んでいる薬(名前・タイミング)

2. コミュニケーション
言葉でのやりとりはどの程度できるか/伝わりやすい言い方・合図/本人が出すサインの意味(「これをするときは〇〇したい合図」など)

3. 好きなこと・落ち着くもの
好きな遊び・物・場所/落ち着く方法。うちの子は太鼓のような音や振動が好きで、初めての場所でも太鼓があると楽しめました。こういう「効く一手」は、知らない人には絶対に分かりません。

4. 苦手なこと・避けたい刺激
苦手な音・光・場所/やられると嫌がること

5. 食事
食べ方の特徴と注意。うちは早食いで、かき込んだり丸呑みしたりする傾向があるので、食事中に水を置かず、食べ終わってから水を出すようにしている——こういう家庭の工夫まで書きます。アレルギーや禁止も。

6. トイレ・排泄
声かけ・誘導の頻度。うちは慣れない環境や退屈なときに失敗しやすいので、学校では1時間に1回くらい声をかけて誘導してもらっている、と書いています。

7. 睡眠
寝る時間・起きる時間/眠るための習慣

8. 体調・発作・通院
持病や発作/体調を崩すときのサイン/通院の予定・頻度

9. 不安・パニックのときの対応
どんなときに起きるか/やってほしい対応/逆効果な対応。ここが一番大事だと思っています。

10. 1日の流れ
平日と休日の、だいたいの過ごし方

11. 緊急連絡先・関係機関
家族の連絡先/相談支援専門員・通所先/かかりつけ・緊急時の病院


作ってみて、気づいたこと

実際に書き始めて、いくつか気づいたことがあります。

自分は「分かっているつもり」だった
書こうとすると、意外と言葉にできない。「なんとなく分かっている」ことと、「知らない人に伝わるように書く」ことは、まったく別でした。書く作業そのものが、この子の理解を深めてくれました。

夫婦で見ると、ズレに気づく
私が書いた内容を妻が見ると、「これはこうした方がいい」と補足が出てきます。二人で書くと精度が上がるし、お互いの認識をそろえる機会にもなりました。義父の私にとっては、この子を知る作業でもありました。

一度で完成させようとしなくていい
全部をきれいに埋めようとすると、いつまでも始められません。我が家は、書ける項目から少しずつ。更新したら日付を残すようにしています。本人も変わっていくので、サポートブックも「育てていくもの」だと考えています。


いつ使うのか

作っておくと、こんな場面で効きます。

  • 緊急時・入院:親が付き添えないとき、看護師さんや支援者に渡せる
  • 災害時:避難先で、本人の特性を一から説明しなくて済む
  • 将来の施設・グループホーム:新しい支援者への引き継ぎ
  • 親なき後:後見人や支援者へ、本人のことを丸ごと託す

どれも「そのとき慌てて作る」のは難しいものばかりです。だから、親が元気で、本人を一番分かっている今のうちに作っておく意味があります。


まとめ

  • サポートブックは、しゃべれない本人の代わりに「この子はこういう子です」を伝える引き継ぎノート。様式は自由
  • 我が家は親なき後を見据えて作り始めた(きょうだいがいないからこそ)
  • 書く項目は、基本情報/コミュニケーション/好き嫌い/食事/トイレ/睡眠/体調/パニック対応/1日の流れ/緊急連絡先など
  • 書くと「分かっているつもり」に気づく。夫婦で書くと精度が上がる。一度で完成させず育てていく
  • 緊急時・入院・災害・施設・親なき後で効く。元気な今のうちに

我が家のサポートブックも、まだ書きかけです。更新しながら、この記録にも気づいたことを足していきます。


この記事について

  • この記事は2026年時点の、我が家の記録です。最終更新日:2026年6月30日。サポートブックの書き方・様式に決まりはありません。様式は、お住まいの自治体や相談支援専門員も用意していることがあります。
  • 家族が特定される情報はぼかして書いています。制度や手続きについては、身近に行政書士(義理の叔母)がいて相談できる環境で書いていますが、私自身は専門家ではありません。
  • 書き手のプロフィールはこちら → /about/

📥 サポートブックのテンプレート(無料・登録不要)

この記事の項目立て(基本情報・コミュニケーション・食事・不安やパニック時の対応・緊急連絡先など)を、そのまま記入できるExcelファイルです。→ 本人のサポートブックをダウンロード(Excel)
※Googleスプレッドシートでも開けます。記入後は個人情報を含むファイルになるため、保存場所にご注意ください。

【関連記事】

【参考リンク(公的機関)】

  • 厚生労働省「障害者福祉」
  • サポートブックの様式や書き方は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や相談支援専門員にもご相談ください。
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この記事を書いた人

重度知的障害・自閉症(愛の手帳A1)の子の義父。再婚で15歳から保護者になり、いま「18歳の壁」——成年後見の申立・生活介護への移行・障害年金の準備を、当事者としてリアルタイムで記録しています。身近に行政書士(義理の叔母)がいて制度を確認しながら執筆。私自身は専門家ではありません。横浜市在住。詳しいプロフィール → https://kazolog.com/about/

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