うちの子は重度の知的障害と自閉症、愛の手帳A1(最重度)。今年の秋に18歳になります。
先日、行政書士(義理の叔母)に我が家の「18歳までにやることリスト」を見てもらったら、上の方の項目が4つひっくり返った、という記事を書きました。
自分で調べたリストを行政書士に見てもらったら、4つひっくり返った
この記事は、そのうちの1つ目——「印鑑登録(実印)」の話です。相談の前はリストのいちばん上にあって、相談が終わったときには、消えていた項目です。
親のコミュニティで聞く、あの話
障害のある子の親どうしの集まりやSNSで、こういう話を聞いたことはないでしょうか。
「重度知的障害の子は、18歳になる前に印鑑登録を済ませておくべき。18歳を過ぎると本人の意思確認ができず、登録を断られる。親の意思で作れるのは未成年のうちだけ」
我が家もこれを聞いて、「誕生日前の駆け込みタスク」としてリストの最上段に入れていました。18歳の壁の話は期限がはっきりしているものが多いので、「間に合わなくなる」と言われると、それだけで焦ります。
行政書士の答えは、「急がなくていい」でした。
理由①「未成年なら親の意思で作れる」が、もう成り立っていない
まず前提が崩れていました。
昔は、未成年の子について親の手続きだけで印鑑登録ができた時期もあったそうです。「18歳前なら作れる」という話は、おそらくその頃の記憶が親のコミュニティの中で受け継がれてきたもの。
でも今は、未成年でも本人の意思確認を求める運用になっています。つまり「18歳になる前なら簡単」の前提が、すでに無い。
相談のあと、うちの市(横浜市)の運用を実際に調べてみました。
- 印鑑登録ができるのは15歳以上で市内に住民記録がある人。そもそも「18歳」は印鑑登録の境界線ではありませんでした
- そして「意思能力を有していない人は印鑑登録できません」と明記されています
- 手続きの流れも本人確認が軸です。窓口で申請すると、市が本人の住所に「照会書兼回答書」を郵送し、本人が署名して持参することで登録が成立する方式(本人が窓口でマイナンバーカード等を示す方法や、保証人方式もあります)
「18歳の誕生日」で何かが締め切られるのではなく、何歳であっても「本人の意思で登録する」制度だった、ということです。うちの子は自分の名前を書けないので、照会書に署名して返す流れは、17歳でも18歳でも同じようにハードルが高い。駆け込む意味は、最初からありませんでした。
理由② そもそも実印の出番が、ほとんどない
冷静になって「実印っていつ使うのか」を数えてみると、出番はかなり限定的です。
- 遺産分割協議書への押印(相続のとき)
- 不動産の売買
- 銀行との大きな契約
日常の福祉の手続き——受給者証の更新、生活介護の契約、手当の現況届——に実印は要りません。我が家の場合、相続は祖父母世代が健在で、当面発生する見込みもない。「持っていないと近々困る」場面が、具体的に一つも挙がりませんでした。
理由③ 実印が無くても回るように、先回りできる
それでも将来、相続などで「本人の実印が要る場面」は来るかもしれません。ここも打ち手を教わりました。
- 親の側が遺言書を書き、遺言執行者を指定しておく。 相続の手続きは執行者が進められる形になり、子の実印・署名がなくても進む
- 将来、成年後見人がつけば、契約は後見人が行うので、そこでも本人の実印は使わない
つまり「子に実印を持たせる」以外のルートで、実印が必要になる場面そのものを減らせる。我が家がもらった宿題は、印鑑登録ではなく親の遺言書の方でした。
それでも将来、登録が必要になったら(教わった進め方)
「二度とできない」わけではありません。うちの子はイエス・ノーの意思表示はできるので、将来必要になったときに登録できる可能性は残っています。そのときの進め方として教わったのが、この3つです。
1. いきなり窓口に行かない。 先に役所に電話などで「うちの子はこの程度の意思表示ができるが、登録できるか」を確認してから動く
2. 対応してくれた担当者の名前を控えて、当日も同じ人にお願いする。 意思確認の受け止め方には担当者による温度差があるそうで、「電話で確認した話」と「当日の窓口の判断」がずれるのを防ぐ
3. 日頃から本人に説明を積み重ねておく。 当日いきなり「印鑑を登録しますか」と聞かれて「うん」と言える状態は、その場では作れない。ふだんの積み重ねで作っておく
この3つは印鑑登録に限らず、銀行など「本人の意思確認」が要る手続き全般に、そのまま使える段取りだと思います。
我が家の結論
- 印鑑登録はリストから消しました(「やらない」ではなく「必要になったときに、上の段取りで検討」)
- 代わりに、親の遺言書と、18歳までの本当の期限つきタスクだった銀行口座の代理人カードを上に上げました(これは別の記事で書きます)
「みんなやっているらしいから」でリストの最上段に置いていたタスクが、調べてみたら期限も必然性もなかった。逆に、誰も教えてくれなかった銀行口座に本当の期限がありました。「18歳の壁」の怖さに背中を押されているときほど、一度立ち止まって「それは何のためか」を専門家に確認する価値があると思います。
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この記事について
- この記事は2026年7月時点の情報と、行政書士(義理の叔母)に我が家のケースを相談した内容、および横浜市の公表情報をもとにした記録です。最終更新日:2026年7月8日。
- 印鑑登録は市区町村の事務で、運用は自治体ごとに異なります。意思確認の方法・登録できる条件は、必ずお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。私自身は専門家ではありません。
- 家族が特定される情報はぼかして書いています。書き手のプロフィールはこちら → /about/
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【参考リンク(公的機関)】
